二つの国の狭間で考える

        s-20171005_123443 (3)
   (今日の写真2枚は 2017/10/05 おらが村にて撮影)        



今日は昨日の『裏話』の続きです。『裏話』は こちらです。

オリジナルは長いので、このブログ用に短くしました。

実は前回の『ノラ猫が機内で‥(略)』も不必要な箇所を削って短くしたのです。

そしたら途中で文章が支離滅裂になってしまったようで‥‥。しかも翌日になってようやくそれに気付くという能天気ぶり。(^^;

はい、無事(?)修正しました。

そうならないように今回は充分注意を払って削っていったつもりなんですが、さて、どうかな?

尚、このエッセイを書いた頃は、我が家はチューリヒ市内にある一軒家で暮らしていました。



___________________________________________

            『EUの孤島でお昼寝』

今年も隣家の庭の菩提樹の根もとに、マドレン愛用のデッキチェアがお目見えした。それを見るたびに私は、良きにつけ悪しきにつけ日本を思い出す。


マドレンは40代後半の専業主婦。うちと同じで夫婦二人暮らしだ。

芝生に陽光が降り注ぐ日にはデッキチェアに寝そべって、読書に、飲食に、うたた寝にと、自由奔放な午後を過ごす彼女の姿が、我が家のキッチンからよくみえる。


デッキチェアで昼寝をするマドレンを初めて見たのは、この家に住むようになって2度めの夏だった。

屈託のない彼女の寝顔に見入っていると、日本に住んでいる姉の言葉が浮かんできた。


残業残業で帰りの遅い夫の世話をして床に就くと、いつも午前さま。朝は朝で息子たちや娘のお弁当作りに5時前には起きてキッチンに立つという。

「このところ寝不足が続いていて体がだるいのよ」とこぼしながら、姉はひっきりなしに肩を揉んでいる。

私が呆れて「そんならソファにでも横になってお昼寝すればいいのに。日中は誰もいないんだし」と言うと、会社で頑張ってくれている夫のことを考えると、悪くてお昼寝なんかできないと彼女は眉を寄せるのだ。

何といじらしい。姉の夫は日本の習慣や伝統を背中にしょって生きているような人だから、これを聞いたらきっと喜ぶに違いない。


そう言えば私の夫にも頭の古いところがある。

もっともこの国がEUの大海で孤島を固守していることを考えると、硬い頭は何も夫に限ったことではない。山国の人たちに見られる国民的な気質のようなものだと思う。


姉の愚痴を思い出したその夜、夫がマドレンの昼寝にいい顔をするわけがないと思いながらも、話を持ち出してみた。

「いいことじゃない!」

予想だにしなかった答えを返されて唖然とする私に、彼は事もなげに言う。

「時間の使い方を工夫して、君もマドレンのようにこの美しい季節を自由に楽しむべきだ」 
  
「あなたが額に汗して働いているときに、ビキニ着てデッキチェアで寝るの?」 

ひと呼吸おいてから彼はこう言った。

「よーく考えてみてくれるかい? きみが私にどれだけ同情してくれたとて、デスクの上の書類の山は同じなんだよ」

私はハッとした。

自分の責任範囲を明確にしないと気がすまないこちらの人には、一蓮托生などあまり美談にはならないのだ。

「寝不足の顔で出迎えてもらうより、爽やかな顔で『おかえり』と言ってもらう方がいいに決まっているよ」

なるほど。



そう言えばバブル景気に日本がわいていた頃、日系の銀行で働き始めたスイス人の知人がいた。

ある日、彼は怪訝な顔で私に訊いてきた。

「日本人の同僚は変だよ。部長がまだ居残っているってそれだけの理由で、引き出しをあけたり閉めたり、用もないのに、書類を開いたり閉じたりして会社に残っているんだよね。僕には理解できないよ」

あー、難儀な質問だ。どう説明していいのか言葉がみつからない。

思わず私はわけの分からないことを口走ってしまった。

「その日本人の同僚は部長の女房役みたいなもんなのよ。だから、夫が忙しい時には妻も忙しい振りをして、気持ちの上で協力しているんだと思うわよ」

個人主義の洗礼を受けて育った知人にしてみれば、謎の上に、もう一つ謎をふっかけられたような心地がしたことだろう。頭の中がクエスチョンマークだらけになったに違いない。


世間の目をはばかることなく悠然とデッキチェアでお昼寝をするマドレンを見ながら、私は二つの文化の狭間で、つらつらとそんな思い出に耽るのだった。

*******************************


s-20171005_113310 (4)

ヨーロッパランキング

2018-10-05 08:54 : 【エッセイ/二つの国の狭間で】 :
« next  ホーム  prev »

ブログランキング&ブログ村

お知らせ

できるだけ多くの人に教えてあげた方がいいような情報や、間違いを指摘して下さったメールなどは、承諾を得た上でブログに転載させていただくこともあります。コメント欄は必要時以外は閉じていることの方が多くなりますが、あしからず。

カレンダー

11 | 2018/12 | 01
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

QRコード

QR

RSSリンクの表示